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第93回:資産運用の原理原則、長期投資と分散投資はなぜ大切なの?(2011年1月)

長引く超低金利の中、投資信託や株式、外貨預金などで「資産運用」を行う人が増えています。一般に資産運用の基本として、「長期投資」と「分散投資」が大切と言われていますが、実際にうまくできている人は案外少なく、長期投資のはずが短期で売買していたり、分散投資のはずが同じような商品を多く購入していたりというようなケースもよく見受けられます。今回のコラムでは、よくある資産運用の失敗例なども具体的に挙げて、正しい「長期投資」と「分散投資」について、FPの立場からご説明したいと思います。


資産運用が必要な時代?

普通預金0.02%、1年定期で0.03%、5年定期でも0.06%(某メガ銀行、定期は300万円未満)と、相変わらず異常に低い預金金利に、あきらめの境地という方もいるでしょう。逆に、「超低金利に耐えかねて投資を始めた」という方もいるのではないでしょうか。

しかしながら、日本は今もデフレで物価が下がり、同じものでもより安く購入することができ、相対的に現金の価値が上がっている状態です。これは、たとえ超低金利でも、実質の価値や実質の金利は高いので、資産運用がうまくいかずに資産が目減りした時は、実際のダメージがより大きいということを頭に入れて資産運用を始めることが大事です。

そのため、「金利が低いから資産運用が必要」「低金利期は資産運用を!」といった単純な言い方は、実は正しいとは言えません。かといって、「資産運用はデフレ期には必要ない」という言い方も間違いです。一般に資産運用は、リスクを許容できる範囲で、個人が選択的に行う行動であって、時期には関係ありません。すなわち、資産運用は、必要だと思う人にとっては、いつでも必要なものといえます。


長期投資と分散投資の特徴やメリットは?

よく、資産運用では、「長期投資が大切だ」「分散投資が大切だ」と言われ、言葉自体は身近になりましたが、具体的に何かと聞かれると、よく分からないという方も多いのではないでしょうか? ここでは、資産運用の原理原則とも言われる、「長期投資」と「分散投資」のメリットや注意点について確認してみましょう。

<長期投資とは?−投資のスローライフ。売買コストがかからず、複利効果も!>

長期投資とは、簡単に言えば、5年や10年、20年の長期的なスパンで運用することを言います。これは、「現在より将来の方が運用する対象が値上がりしている」ことを期待して行うもので、短期では値下がりはあるかもしれませんが、長期では大きく値上がりしているという前提で行うことになります。その具体例としては、将来の新興国の急成長に期待して、中国株ファンドやインド株ファンド、ブラジル株ファンドなどの新興国ファンドへの投資、今後の有望な事業領域で大きく化けそうな成長企業への株式投資、また将来の円安を期待した円高時の外貨投資など、様々なものが挙げられます。

項目 長期投資 短期投資
期間目安 5年、10年、20年・・・ 数ヶ月〜数年
運用対象 投資信託、現物株、ETF、REIT、債券、外貨定期預金、変額年金保険、確定拠出年金、金・・・ 現物株、信用取引、外貨普通預金、外貨MMF、外国為替証拠金取引、CFD取引・・・
短期の値下がり 気にしない 時として損切りも必要
短期の値上がり 目先の利益に焦らず 利益の確定売りは大事
売買コスト 小さい 大きい・・・売買手数料がかさむ
投資家の気分 ゆったり 忙しい、心配
複利効果 大きい 小さい

通常、長期投資は、数ヶ月〜数年程度の短期投資とは違い、日々の価格変動に一喜一憂せずに、どっしりと構えて行います(投資のスローライフ)。その際に重要なのは、将来的に大きく値上がりする対象が何かを見極めることであり、新興国が大きく成長する、この事業分野の企業は大きく伸びる、日本は国力の低下と共に円安が進行する、世界各地でインフラ開発が進んで資源価格(商品価格)が上昇する、といった「トレンド」を把握することではないかと思います。

また、運用収益については、投資信託を例に挙げた場合、購入時には手数料がかかりますが(ノーロードファンドは無料)、その後は売却するまで信託報酬以外の手数料はかからず、保有期間中の分配金の再投資による「複利効果」とファンドの「基準価額の上昇」に期待しながら、長い目で見ることが必要といえます。ただし、ファンド選びに失敗すると、長い目で見る所ではなくなるので、長期投資では最初の銘柄(投資対象)選びは非常に大切となります。

一般に長期投資は、将来の大きな運用果実(資産価格の上昇)を期待して、自分でリスクを取って長期間の運用をじっくりと行うもので、絶対にうまくいくという保証はありません。その一方で、預貯金などの安全運用をずっと続けた場合は、元本割れのリスクは回避できますが、将来の大きな運用果実を手にすることはできません。そのため、長期投資をするかどうかは、自分の「リスク許容度」と「期待収益」を考えて判断することが必要ではないかと思います。

<分散投資−相関関係の低い資産に分けて運用する。長期投資による相乗効果も!>

資産運用の有名な格言に、「卵を1つの籠に盛るな!」というものがあり、これは「分散投資」の重要性を説いたものです。その意味としては、卵は壊れやすいので、鶏小屋から卵を運んで来る際には、一つの籠にたくさん入れてはいけないという教えであり、本格言では、卵をお金に置き換えて、一つのものにまとめて投資するとリスクが高いので、分散投資が大切という教えになっています。

一般に分散投資とは、価格変動リスクを低減するために、投資資金を複数の投資対象(リスクの相関性の低い複数の資産)に分けて運用することを言います。広く捉えれば、資産分散のほか、銘柄分散や業種分散、地域分散、また投資する時期をずらす時間分散という考え方も含まれます。その効果としては、投資資金を一つの投資対象に集中せずに複数の投資対象に分散させると、もし投資対象の一つが値下がりしても他の投資対象でカバーできる可能性があるため、投資全体の値動きを安定させる効果が期待できます。さらに、より良い分散投資ができていれば、長期投資との組み合わせにより相乗効果が生まれやすいとも言われます。

このように分散投資には、リスクを低減する効果があり、主に中長期の投資スタイルに向いています。また、投資対象の分散先としては、国内株式、外国株式、国内債券、外国債券、国内REIT、海外REIT、コモディティなどがあり、個人でも気軽にできる分散投資の仕組みを持った金融商品が「投資信託」です。ちなみに、投資信託の中にもいろいろな種類がありますが、例えば、ビギナーに向くとされるグローバルバランス型のファンドは、世界の株式や債券に分散投資をする商品で、これ1本で多様な分散投資が一度に可能な商品と言うことができます。

分散投資の由来
分散投資は、20年前にノーベル経済学賞を受賞したマーコビッツの「アセット・アロケーション理論」からきています。これは、値動きが異なる資産を組み合わせることで、リターンの期待値を下げずに、リスクを抑えることができると発見したものです。また、それを理論付けたものが、「アセット・アロケーション理論」に基づく「モダンポートフォリオ理論」です。
相関関係の意味
ある2つの資産が同じ値動きをする時には「相関関係」があると言い、また逆の値動きをする時には「負の相関関係」があると言います。例えば、日本株式と外国債券は負の相関関係にあり、両者を組み合わせることでリスクを下げることができます。

長期投資や分散投資で、こんな失敗していませんか?

これまでは理論的なことについて説明してきましたが、ここからは、長期投資や分散投資を前提にしているにもかかわらず、ついやってしまいがちな行動や失敗について、事例を挙げてFPの視点から見てみましょう。意外と似たようなことを経験されている方は多いのではないでしょうか?

事例1 数年前、使う目的がないからと、保険の満期金50万円で日経平均のインデックスファンドを購入。しばらく元本割れが続いたため、1年ほど前に損切りをして、別のファンドに乗り換えたが、その後、日経平均が改善し、悔しい気持ちに・・・。
FPの視点 長期のスタンスで購入したインデックスファンドであれば、特別な理由がない限り、本来は値が下がっても我慢すべきところですが、損切りしてしまったことが問題といえます。そのため、損切り後に日経平均が改善し、後悔するといった体験をすることになってしまいました。ただし、元のファンドがテーマ型のもので、トレンドが変わってしまった、という場合などはこの限りではありません。
また、資金が50万円あった場合、投資時期を分散するために、数回に分けて投資をするのも、一つのリスク軽減法だったと思います。一般に長期投資では、購入タイミングも大事なので、あまり考えたくない(よく分からない)場合は、定時定額購入(積立)にするのもよいでしょう。

事例2 1年ほど前に、ずっと保有していくつもりで、グローバルバランス型の投資信託を購入。少し利益が出たので、利益を確定するために慌てて売却してしまった。
FPの視点 長期投資のスタンスから言うと、細かく利益確定売りをするものではありません。ましてや、投資信託という商品は長期保有型で、短期で売買するのであれば、決してベストの選択とは言えない商品です。しかも「グローバルバランス型」で世界の株や債券に分散投資をするタイプは、まさしく長期保有のための商品でした。基本的には、「長期保有をしながら、じっくりと資産形成をしていくのが投資信託の特徴」と、ご理解頂ければと思います。

事例3 7・8年前、テーマ型の投資信託(ファンド)を購入。近年では、大きなトレンドの変化があって、そのテーマの魅力が薄れたことで値下がりしたが、「長期保有」で始めたのでそのまま保有し、塩漬け状態が続いている。
FPの視点 投資信託は長期保有が向く商品ですが、中には例外もあります。一般にトレンドに左右されがちなテーマ型(バイオ・ゲノム、農業、代替エネルギー、SRI、エコ他)や、特定の国・地域に投資するファンドなどの場合は、トレンドが変わったり、その国・地域の成長が今後見込みにくくなったりした場合などには、長期保有で購入したものでも売却を検討する必要があります。その際のポイントは、「今後の成長」が見込めるかどうかで、「テーマの魅力が薄れた」ことが長期的なものである場合は、売却を検討することも必要ではないかと思います。

事例4 30代のA君は、「老後のため」と毎月分配型のソブリンファンドを購入。なお、A君は知らなかったのですが、違う選択肢として、税制面で有利な個人型401Kも利用できました・・・
FPの視点 毎月分配型ファンドは、定年後の年金の足しにと利用されることが多いもので、30代など若い層にはあまり向いていません。一般に資産形成期に選択すべきものとしては、配当が出ない無分配型か、出ても再投資されるタイプを選ぶべきでしょう。また、長期投資で資産を増やすことが目的であれば、長期投資の効果が低減してしまうので、毎月配当をもらうタイプは選択肢から外した方がよいでしょう。
なお、401kが利用できるのであれば、一つの良い選択肢になるでしょう。それは、掛け金が税制面で全額控除の対象になるため、投資をしながら節税にもなるからです。

事例5 「長期投資」のつもりで始めた投資信託(ファンド)が元本割れ。でも、結婚とマイホーム取得でお金が必要になり、泣く泣く売却。いわゆる損切りに・・・。
FPの視点 一般に投資をする以前の問題として、投資資金を見極める必要があり、生活予備費として生活費の3〜6か月分、その他、5年以内に使う予定のあるものは、投資性のものに回さないことは大前提です。この例では、長期投資に回せない資金でファンドを購入していたことが間違いの元になっています。例えば、結婚資金などは、本来は預貯金やMMFといった、いつでも解約できる安定運用の金融商品にとどめておくべきだったと思います。
この事例のような方は実は少なくなく、時々お聞きします。また、投資に慣れた方でも、資金の効率を上げる目的で、ついやってしまうことがあるようです。

事例6 リスク分散をしようと、株式投資で保有銘柄を2つから4つに増やした。ちなみに、他の金融資産は預貯金だけ・・・。
FPの視点 株式投資の例ですが、「リスク分散」の意味が基本的に違っています。もともと日本株と預貯金だけでしたので、株式の銘柄を分けるよりも先に、アセット(資産)を分けることが必要でした。つまり、「リスク分散」が目的であるなら、本来は、個人向け国債や公社債投信・MMFなどの債券が組み込まれたファンドか、あるいは外貨預金や外貨MMFなど外貨投資に該当するものを組み込むことが先決といえます。

事例7 「リスク分散」のために外貨投資をしようと考えた。それで、長期保有ならタイミングは関係ないだろうと、トレンドもチェックしないまま、一気に外貨預金を作成した。しかしながら、預入時から円高が急激に進んだため、いわゆる塩漬け状態に。
FPの視点 外貨投資の例ですが、為替相場を長期で考えるのであれば、やはり円高局面での投資が基本となります。もし円安にならなければ、為替差益は得られませんし、円高が進むと為替差損が生じてしまいます。一般に長期保有だからこそ、為替トレンドを見極めることが大事になりますし、場合によっては、資金を分割して、投資の時期を分散するといった方法も検討していきたいものです。


2011年1月
ファイナンシャルプランナー
ファミリーリスクコンサルタント
豊田眞弓

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