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第90回:円高はチャンス? 個人のマネープランへはどう活用すればいい?(2010年10月)

ニュースで、「円高・円安」「米ドル高・米ドル安」といった言葉を耳にしたことはありませんか? 以前よりも頻繁に聞くようになった、という人がいるかもしれませんが、それは気のせいではありません。最近は、米国の動向により急激な円高・米ドル安が進んだことから、政府や日銀の対応にも注目が集まっています。

では、円高は、個人の生活にどのような影響があるのでしょうか。海外旅行に行きやすくなったり、円高で輸入品が安くなったりといったメリットが挙げられがちですが、実はそう喜んでばかりもいられない面もあります。また、円高傾向の時期は外貨投資などを始める絶好のタイミングとも言われますが、実際に個々のマネープランにはどう取り入れていけばよいのでしょうか。今回のコラムでは、円高と個人のマネープランのポイントついて解説してみたいと思います。


「円高」ってどんなもの?

まずは、基本的な概念として、「円高と円安」について整理してみましょう。 一般に、ある国の通貨と他の国の通貨を交換することを「外国為替」といい、交換するときのレートのことを「為替レート」と言います。米ドルの場合、1米ドル=85円の時には、85円を出せば1米ドルと交換できることを指し(厳密には為替手数料などもかかる)、このレートは24時間変動し続けています。

例えば、数カ月前に1米ドル=90円の為替レートだったものが、今は1米ドル=80円になったとします。以前は1米ドルを手に入れるのに90円必要だったものが、今は80円で手に入れられることになり、円の価値が上がったことになるため、これを「円高」といいます。逆に、1米ドル=90円だったものが、1米ドル=100円になった場合には、90円で1米ドルと交換できたものが、100円出さないと交換できなくなり、円の価値が下がったことになるため、これを「円安」といいます。この為替レートは、シーソーになっていて、対米ドルレートで円高が進めば米ドルは安くなり、逆に円安が進めば米ドルは高くなります。つまり、「円高」とは「円高・米ドル安」のことを指し、また「円安」とは「円安・米ドル高」のことを指します。

ここまでは、対米ドルで説明してきましたが、他の通貨との間でも同じことが言えます。例えば、ユーロに対して「円高」であれば「円高・ユーロ安」を指し、逆に「円安」であれば「円安・ユーロ高」を指します。なお、ニュースなどで「円高」と報じられた時には、特に説明がない場合、通常は対米ドルのことを指すことが多いですが、それ以外に円が他通貨に対して全般的に円高になっている状況を指すこともあります。また、その時々の為替相場の動向によっては、対米ドルでは円高、対ユーロでは円安ということもありえますので、円高の状況については具体的に把握するようにしましょう。

円高 円安
円 ↑(高) ⇔ 米ドル ↓(安) 円 ↓(安) ⇔ 米ドル ↑(高)

円高の個人へのメリットは?

一般に米ドルやユーロなどで円高が進むと、個人にはどのようなメリットがあるのでしょうか? 普段の生活において、仕事で輸出入等に関わっている人や資産運用で外貨投資を行っている人などを除けば、あまり為替レートの変動を実感できる機会は多くありませんが、実際に「円高」を実感できる機会としては、次のようなものが挙げられます。

海外旅行にリーズナブルに行ける

海外旅行に行く場合、円高の時ほど同じ日本円でも外貨両替で受け取る外国通貨の額が多くなり、またクレジットカード払いの円換算額も少なくなり、さらに現地通貨建ての価格を円換算すると安く感じられたりします。具体的には、国内で申し込むパッケージツアーの料金も円高が反映されて安くなり、同じ内容なら安く海外旅行に行けたり、同程度の費用ならホテルのランクを上げたり、また現地でのショッピングや食事でも安く感じられたりして、お得感があります。

輸入食材や輸入品が安く買える

円高が続くと、輸入面で有利になるため、スーパーやデパート、専門店などが「円高還元セール」を行うことがよくあります。例えば、輸入牛肉やワインなどの特売が行われたり、輸入アクセサリーや海外ブランド品などのセールも行われたりします。さらに、輸入家具や輸入車なども安くなり、消費者にとっては円高のメリットを享受することができます。


円高の社会へのデメリットは?

円高のメリットだけを見ていると、円高が「いいもの」に思えてきますが、実は良い面ばかりではなく、次のようなデメリットもあります。特に円高の企業への影響は非常に大きく、それが従業員の給料面(収入減)や雇用面(失業)、さらには国や地方公共団体の税収面(減収)にも影響を及ぼし、直接的あるいは間接的に私たちの生活に響いてくることになります。

円高で輸出が厳しくなり、輸出企業がダメージを受ける

自動車関連企業など海外を市場とする輸出企業(製造業等)にとっては、「円高」の状態は海外での製品価格が高くなることを意味するため、海外での売上がダウンします。通常、輸出が振るわなくなれば減収となり、その会社で働く従業員の給料が下がることもあります。さらに経営難から倒産する企業や、生産拠点を国内から海外に移転する企業も出てくるなど、雇用面にも影響を及ぼすことがあります。

円高で輸入品が安くなり、国内の競合企業がダメージを受ける

円高で輸入品の価格が下がると(輸入品が安くなって売れると)、競合する国産品が売れなくなり、国内にある競合企業の売上がダウンし、輸出企業と同様、ダメージを受けることになります。そのため、円高の時には、影響を受ける国内企業のためにも、意識して国産品を買うことも大事といえます。

日本への観光客が減り、国内の観光関連がダメージを受ける

現在、日本において、海外からの観光客を呼び込むことは、国や地域にとって重要な課題となっています。国内の観光関連の会社や従事者などにとっては、円高で日本に来る観光客が減ることは売上の悪化や収入減につながり、ダメージを受けることになります。

外貨資産を持っている人は資産価値が下がる

円高は、既に外貨資産を持っている人には、為替差損が出るなど資産価値の面で影響が出ることになります。これについては、購入時の為替レートや商品内容により影響度が異なりますが、円安になるまで待てれば、実際の損は発生しません。


中長期の視点で円高を資産形成に活かす

このように、デメリットも含めると円高は必ずしも良いものとはいえませんが、中長期の視点で個人の資産形成の面から見た場合は、一つの投資機会(チャンス)となることがあります。特に、これから外貨投資を始める人(再開する人)にとっては、歴史的な円高水準のレートで外貨資産を持てるため、格好のチャンスかもしれません。

また、将来の日本の状況(国力低下、財政赤字問題等)を考えた場合、円の価値が相対的に下がることもありえますので、ポートフォリオ(金融資産の構成)の中に「資産価値が高まる可能性のある外貨資産」を加えておくことは、資産の分散を図ることができて、収益の可能性を広げると共にリスク軽減にもつながり、ポートフォリオのバランスを取ることができます。ここで、「リスク軽減につながる」と書いたのは、相関性がない資産を持つことで、もしも特定の資産、あるいはその中の銘柄が下がった場合でも、他の銘柄や他の資産には影響がなく、他の銘柄や資産がプラスになっていれば、マイナスを埋めることができてリスク軽減につながる、という考え方(理論)に基づきます。

一般に外貨投資では、「円高の時に買って円安の時に売ることで、為替差益を中心に収益を狙っていく」ことが運用の基本となり、いかに円高の時期に外貨資産を購入できるかが一つのカギとなります。もちろん、円高がさらに進まないとは誰にも保証できませんので、投資金額や投資時期、為替レートなどのリスク管理は必須となります。特に、円高がすぐに終わるのではないかと思って焦って投資するのは禁物で、購入する際の為替レートの間隔を十分に取ること、投資可能な資金をすぐに使い切らないように時間をかけてじっくりと行うことは大切ではないかと思います。

外貨投資の心がけ
一番の円高時に購入することは不可能なので、円高進行による為替の評価損を考えて、投資余力を常に残し、心にゆとりを持って外貨投資をすることが大切。


外貨投資に向く商品と運用の際の注意点は?

実際に外貨投資を行うにあたっては、どのような金融商品があるのでしょうか?
これについては、目的に応じて様々なものがあり、具体的には以下のような商品が挙げられます。また、共通するポイントとして、

  • 預入時よりも円高になると為替差損が発生し、元本割れを起こすリスクがあること
  • 円から外貨、外貨から円に替える時に為替手数料がかかるため、往復分の手数料以上の円安にならないと、為替差益が見込めないこと(手数料は金融機関や通貨によって異なる)

は、最低限理解しておくことが必要です。

外貨預金 外国通貨で預け入れる預金のことで、「外貨普通預金」や「外貨定期預金」などがある。取扱通貨は、米ドル、ユーロ、ポンド、豪ドル、スイスフランなど金融機関により異なる。また、元本や利息は外貨で受け取り、金利はその通貨を発行している国の金利水準が反映され、日割りで計算される。なお、外貨での引出しやトラベラーズチェックの作成、外国送金などが可能で、外貨の活用という点で利便性が高い。
外貨MMF 外貨建ての投資信託の一種で、格付けの高い公社債などで運用され、いつでも解約ができる。取扱通貨は、米ドル、ユーロ、豪ドルなど金融機関により異なる。一般に外貨普通預金よりも高い利回りで運用され、分配金は毎月末に元本へ再投資される。なお、外国債券や外国投信などの償還金の受け皿としても使える。
外国債券 発行者、通貨、発行場所のいずれかが海外の債券をいう。例えば、世界銀行などの国際機関が発行する外貨建ての債券などがあり、一般に預入期間は外貨定期預金より長く、利率は外貨定期預金より高い。また、運用にあたっては、為替リスクだけでなく、債券の発行体の信用力にも注意が必要。
海外の資産で
運用する投資信託
外国籍の投資信託と海外の資産(株式、債券等)で運用している日本の投資信託があり、少ない資金で国際分散投資が可能。一般にオープン型が多いので、いつでも売買ができるが、為替変動の影響は常に受ける。
外国為替証拠金取引
(FX)
証拠金をベースとした外国為替取引で、「店頭取引」と「取引所取引」の2つの種類がある。外貨預金や外貨MMFなどと比べて、為替レートや為替手数料の面で有利で、リアルタイム取引が可能。また、1000通貨単位の取引やレバレッジを1倍程度に抑えて取引を行えば、リスクを小さくすることができる。
外貨建て年金保険

終身保険
保険料を外貨、あるいは円で支払い、運用を外国債券などで行う保険で、満期保険金や死亡保険金などは外貨でも日本円でも受け取れる。通常、米ドルが中心で、一部ユーロ建ての商品もある。国内の保険よりも予定利率(積立部分の運用利率)自体は高いものの、為替リスクがあることに注意。また、途中解約では、一定期間、解約控除が差し引かれる場合もあるので注意。

次に、これらの商品で外貨投資を行う際には、特に為替レートの変動というリスク要因を頭に入れて、以下のような点に注意しましょう。

(1)情報収集しやすい通貨を選ぶ

通貨が選べる商品については、情報収集しやすい国の通貨や、自分にとって関心の高い国の通貨にしましょう。

(2)時間の分散や投資額の分散などに留意する

外貨投資では、一度に資金を投入しないのもリスクを軽減する方法。投資予定額を数回に分ける、あるいは積み立てを利用して、購入時より円高になったら買い増すなど平均購入レートを下げる努力をしましょう。

(3)為替手数料がかかるものはよく把握して損益管理をする

為替手数料がかかる商品を利用する場合、途中で損益の把握ができなくなる場合があるので注意しましょう。これについては、毎回の取引を細かく記録する方法のほか、投資をした元金(円建て)を控えておいて、今売却したら実際にいくら(円建て)で受け取れるのかを分かるようにしておきましょう。

(4)長期間、円高が続いた時は外貨で使う手立ても検討する

予想に反して、長期間、円高が続いた時には、外貨として使う手立ても検討しておくとよいでしょう。例えば、海外旅行で外貨を使う、子どもの海外留学で外貨を使うなどの場合は、外貨両替や外国送金が利用できる外貨預金の利便性は高いといえます。提携している海外のCDやATMから外貨預金を外貨のまま引き出せる金融機関もあります。また、通貨については、米ドルやユーロなど将来使う可能性の高いものを選んでおくとよいでしょう。

(5)今後の相場を自分なりに考える

外貨投資においては、為替相場を自分なりに考えることが必要です。その際には、現在の為替相場が過去のチャート(為替相場のグラフ)から見て、どの位置にあり、中長期で考えてどうなのか、という視点が大切です。また、短期的な相場については、新聞の記事や専門家のレポートなども一つの参考になるでしょう。


最後に、円高というものは、後になってみて、「あの時が円高でチャンスだった!」と思うことが多いです。現在の円高はいつまで続くのかは分かりませんが、外貨投資などで個人のマネープランに活用する際には、よくある失敗や後悔をしないためにも、しっかりと勉強をして臨むことをお勧めします。


2010年10月
ファイナンシャルプランナー
ファミリーリスクコンサルタント
豊田眞弓

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