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第83回:老後は自助努力の時代、自分で準備できる上乗せ年金には何がある?(2010年3月)

現在の日本において、多くの高齢者世帯では、老後の生活資金の大半を公的年金に頼っています。しかしながら、少子高齢化が急速に進む中で公的年金制度は非常に厳しい状態にあり、公的年金の受給開始年齢の引き上げも徐々に進んでいます。多くの人が老後の生活資金を公的年金だけでまかなうのは難しいと感じ、「国や会社に頼るだけでなく、自分でも老後資金の準備を!」という意識が年々高まっているようです。

とはいえ、やはり将来の老後資金の第一の柱は公的年金となります。実際、いやおうなく収入の中から払っている公的年金の保険料は決して少額ではありません。また、仮に一定年齢から死亡するまで、生活するのに十分な額の給付が受けられる年金を民間の保険等で準備しようとすれば、保険料はかなりの高額になります。それゆえ、自助努力による老後資金の準備は、「公的年金で足りない分を補う上乗せ部分の準備」と考えるのが妥当といえます。

そこで今回は、自分自身の公的年金の給付内容を確認し、自分で準備できる「上乗せ年金」にはどんなものがあるのかを見てみましょう。


まずは公的年金の加入内容を確認することが大切

働き方が多様化する中で、転職や独立などで加入する公的年金制度が変わったりして、将来、どれくらいの公的年金が受給できるのか、不安になっている方もおられるかもしれません。一般に老後の生活資金を考える場合、自助努力による「上乗せ年金」がどれくらい必要になるかは、公的年金がどれくらい受給できるのかによって大きく違ってきます。まずは、自分や家族の加入している公的年金制度について確認してみましょう

<日本の公的年金制度の概要>
3階部分 企業年金等 職域加算
2階部分 厚生年金 共済年金
1階部分 国民年金(基礎年金)
被保険者
の種別
第1号被保険者 第2号被保険者 第3号被保険者
自営業者、フリーター
学生等
会社員 公務員 会社員や公務員の
配偶者

上記の表のように、日本の公的年金制度は、働き方の違いによって、1階建て〜3階建ての違いがあります。第1号被保険者(自営業者やフリーターなど)と第3号被保険者(会社員や公務員の妻)は、1階部分の国民年金から「老齢基礎年金」しか受給することができません。これに対して、第2号被保険者である会社員は、2階部分の厚生年金からも「老齢厚生年金」が受給でき、さらに「企業年金等(厚生年金基金や確定給付企業年金、企業型の確定拠出型年金など)」が上乗せされる場合もあります。また、同じく第2号被保険者である公務員の場合は、2階部分の「退職共済年金」と3階部分の「職域加算」を併せて受給することができます。

この公的年金の加入状況については、平成21年4月から開始された、国民年金および厚生年金保険の全現役加入者向けに毎年誕生月に送付される「ねんきん定期便」で確認するとよいでしょう。具体的には、年金加入期間や保険料の納付状況、将来受け取る年金の見込額などが毎年確認することができるので、上乗せ年金を考える際の一つの参考になります。また、「ねんきん定期便」の記載内容に誤りがあったら、必ず訂正の手続きをして、公的年金が確実に受給できるようにしておきましょう。


働き方によって異なる上乗せ年金の必要性

一般に自営業者の方などは、公的年金からは「老齢基礎年金」のみの受給となりますが、その金額は、満額受給できても月額約66,000円、夫婦二人の場合でも約13万円です(平成22年度)。仮に夫婦二人の老後の1ヵ月の生活費が25万円かかるとしたら、毎月10万以上不足することになり、厚生年金や共済年金などを受給できる会社員や公務員の方などに比べて「上乗せ年金」の必要性はいっそう高いといえます。

これに対して、老齢基礎年金に加えて「老齢厚生年金」を受給できる会社員の方は、夫婦二人の場合で一つの例(※)として約23万円受給することができ、自営業者などの夫婦に比べれば、公的年金は手厚いといえます。なお、この金額については、加入期間や在職中の報酬額によって異なる納付保険料額によっても、また企業年金等があるかどうかによっても将来の年金額は大きく異なるため、自分の将来の年金額の見込額を把握して、どれくらいの「上乗せ年金」が必要なのかを考えるとよいでしょう。

<平成22年度の年金額(月額):厚生労働省のHPより参照>
国民年金 (老齢基礎年金:1人分) 66,008円
国民年金 (老齢基礎年金:夫婦2人分) 132,016円
厚生年金 (夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)※ 232,592円

※厚生年金は、夫が平均的収入(平均標準報酬36.0万円)で40年間就業し、妻がその期間全て専業主婦であった世帯の新規裁定の給付水準


「公的な上乗せ年金」という選択肢もある

これまで説明したように、公的年金は働き方によって大きく異なり、特に自営業者などの第1号被保険者は受給できる金額が一番少ないです。また、第2号被保険者でも、加入期間や報酬金額(収入)、企業年金等の有無によって受給できる金額に大きな格差が生じています。これに対して、国も第1号被保険者や企業年金等のない第2号被保険者などの老後を支援するために、自助努力で自由に利用できる「公的な上乗せ年金」をいくつか制度として用意しています。

これらの公的な上乗せ年金は、掛金が全額所得控除になり、受け取る年金は公的年金等控除が適用されるので、民間の個人年金保険などよりも税金負担が軽くなっているのが大きな特徴といえます。

付加年金 国民年金の第1号被保険者を対象に、毎月の国民年金保険料に付加保険料(月額400円)をプラスして納付すると、老齢基礎年金に付加年金が上乗せされる制度。付加年金の受給額は、「200円×付加保険料納付月数」で計算され、例えば10年間付加保険料を払ったら、24,000円(=200円×12ヶ月×10年)が年金額に上乗せされる。付加年金を2年間受給すると、納めた付加保険料総額と同額になるので、上乗せ年金としては少額ではあるものの、かなりお得な仕組み。市区町村の年金担当の窓口で申し込むことができる。
国民年金基金 国民年金の第1号被保険者を対象とした、老齢基礎年金に上乗せする2階建て部分の年金制度。掛金は月額68,000円を上限として、年金額や給付の型を自分で選択・加入することができ、掛金は全額所得控除になる。都道府県ごとに設置された「地域型基金」と、職種別に設立された「職能型基金」の2種類がある。
個人型
確定拠出年金
加入者本人が拠出した掛金を、加入者自らが運用商品を選んで運用し、その運用の結果に基づいて、60歳以降に年金または一時金で給付が受け取れる制度(運営主体は、国民年金基金連合会)。国民年金の第1号被保険者だけでなく、企業年金等や企業型確定拠出年金がない企業の会社員も利用できる。拠出限度額は、自営業者などの場合は月額68,000円(国民年金基金と合わせて)、会社員の場合は月額23,000円で、掛金は全額所得控除の対象となる。運用がうまくいけば、資産を大きく増やすことができ、運用期間中の利息や配当金が非課税になるなどのメリットがある。その一方で、運用がうまくいかなければ、資産を大きく減らす場合もあり(元本保証はなし)、また原則として60歳以降でないと受け取れないことや、運用状況に関わらず手数料がかかるなどのデメリットもある。

「民間の上乗せ年金」という選択肢もある

公的な上乗せ年金については、対象となる人が限定されていますが、「民間の上乗せ年金」であれば、会社員や公務員、自営業者や専業主婦等の働き方に関わらず、誰でも実践することができます。多くの人が自助努力で何とかしようとするのがこれであり、具体的には以下のようなものがあります。実際に、この部分の上乗せをどれくらい用意できるかが将来の老後の安心へと繋がり、長い目で見ると各ご家庭で大きな差が出る部分と言えます。

(1)個人年金保険の活用による公的年金への上乗せ

民間の上乗せ年金として真っ先に思いつくのは、「個人年金保険」ではないでしょうか。近年では、保険会社だけでなく、様々な金融機関の窓口でも販売されています。これには、大きく分けて「定額型」と「変額型」の2種類があり、保険料を払い(定額型は月払や年払いなどの分割払いや一時払い、変額型は一括払いが主流)、一定期間運用して、将来(老後)に年金が受け取れるという保険商品となっています。

個人年金保険を受取期間で分けると、有期年金、確定年金、終身年金があり、同じ年金額を受給する場合は、受取期間が長いほど保険料負担は重くなります。また、年金開始前に死亡した場合には、死亡給付金を受け取れます。この死亡給付金について、定額型では、死亡時点での払込保険料累計額に応じた金額となるのに対し、変額型では、通常、死亡日の積立金額相当の金額となります。

また、個人年金保険には、運用(据置)期間中の運用益に対する「課税繰り延べ効果」や「生命保険料控除」があり、税制面でもメリットがあります。さらに、自動引き落とし等で保険料を支払い、また預貯金などとは異なり、気軽に引き出せない(解約できない)ことから、老後資金を着実に準備する上でも効果があるといえます。(中途解約する場合には、元本割れする場合もあるので、事前にその仕組みをよく確認しておくことが必要)

定額型の
個人年金保険
契約時に毎月の保険料と将来の年金額が確定している(予定利率が契約時に決まっている)ため、老後の生活設計が立てやすいというメリットがある。もし予定利率の高い時期に契約することができれば、安い保険料で将来の年金を確保することができる。現在は、予定利率が非常に低いため、運用商品としての魅力は少ないものの、最初から将来の受取額が決まっているという安心感がある。
変額型の
個人年金保険
投資信託(ファンド)に似た仕組みを持ち、「特別勘定」というファンドの運用実績によって、積立金(年金の原資となるお金)や解約返戻金、死亡保険金が増えたり、減ったりする。運用がうまくいくと年金額も増えるので、定額型よりもインフレ対応力があるとされている。また、特別勘定については、1つのものや複数のものもあり、複数ある場合は投資先や投資割合を契約者自身が決めることになる。なお、仕組みが似ている投資信託に比べて「保険」としての手数料が発生するため、その分コストが高くなることに注意が必要。

(2)老後に長期間取り崩すことが可能な金融資産の準備

公的年金の上乗せを考える場合、個人年金保険のように年金タイプで用意する以外に、「老後に長期間取り崩すことが可能な金融資産の準備」をすることも一つのやり方です。実際のところ、現在、老後生活を送っている方の多くが預貯金などの金融資産を取り崩していることを考えれば、将来の老後を迎えるまでに、ある程度の金額の金融資産をいかに準備できるかが大きなカギとなります。

この金融資産の準備については、働き方によっても大きく異なり、会社員や公務員の方には退職金がある一方で、自営業者などの方には退職金が基本的にないため、自営業者や退職金があまり期待できない方などはより自助努力が求められます。その準備にあたっては、長期的な視点と計画性、そして明確な意思が必要であり、具体的には以下のような方法があります。

預貯金
(円預金)
日本では、長い間超低金利が続いており、利回りは非常に低くなっているものの、元本保証が常にあるのが大きなポイント。また、金融機関が経営破綻した場合でも、預金保険法などによって、元本1000万円とその利息が保護される。金融資産を安全かつ確実に運用する際に最も基本となる商品であり、定期預金や積立定期などをうまく活用することがカギとなる。長い運用において、資産を減らさないという視点はとても重要。
債券投資 個人向け国債や信用力のある大企業の普通社債などを購入して、長期間運用するのも一つのやり方。実際の投資にあたっては、債券の発行先の信用力を確認する上で、格付けのチェックは基本となる。
投資信託 投資信託は、投資家から集めたお金を1つにまとめ、運用のプロであるファンドマネジャーが債券や株式、不動産などで運用し、運用成果に応じて収益を投資家に分配する仕組みの金融商品。非常に多くの種類があり、運用時のファンド選びが特に重要となる。また、長期的に資産を増やすためには、長期投資と分散投資をいかにうまく行うかが大きなカギ。
外貨投資 日本の将来への見方には悲観論も多く、長期的には円安になるという予測も多い。為替相場を予測するのは非常に難しいものの、過去の相場と比べて円高が大きく進んだ時などに外貨預金や外国債券等に無理のない金額を投資して長期間保有するのも一つのやり方。

老後資金の準備は、早めにスタートを!

平成20年の簡易生命表によれば、60歳の平均余命は、男性は22.58年、女性は28.12年です。一般にリタイア後の生活は20年以上続く可能性がありますので、仮に毎月5万円の「上乗せ年金」を準備しようと思うと、25年分の合計金額は1500万円にもなります。この金額については、一朝一夕で準備できるものではないので、老後資金の準備は早いうちから時間をかけて行うのが家計にも無理のないやり方といえます。

将来の老後資金については、公的年金がやはり基本となりますが、時代の流れから見て、自助努力はどうしても必要となります。現在、様々な金融商品が「老後資金対策」として売り出されていますが、それぞれの金融商品のメリットやデメリット、特徴をよく理解した上で、計画的に自分や家族にとって十分な「上乗せ年金」を長期的な視点で準備することがやはり大切ではないでしょうか。

2010年3月
大林香世(CFP®)

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