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第73回:低金利の時代、住宅ローンの繰上返済はどうすればいい?(2009年7月)

出口の見えない不況の中、ボーナスの大幅削減などが家計に大きな打撃を与えています。一方、相変わらずの低金利で、貯蓄も大きく増やすことは期待しにくく、また、収入も伸び悩み、入ってきたお金は1円たりとも無駄にはできない雰囲気があります。

そのような中、住宅ローンを抱える世帯では、必死に「繰上返済」を行う姿もよく目にします。繰上返済を行えば、確かに将来支払わなくて済む利息の分だけお得になりますが、一つ間違うと家計のバランスを崩すことにもなりかねません。今回は、住宅ローンの繰上返済の効果や注意点について、具体的に解説していきます。


住宅ローンの繰上返済の仕組みとメリットは?

住宅ローンの繰上返済とは、ローンを借りている人が、月々の返済とは別に、ローン残高の一部をまとめて返済する方法です。その効果としては、返済分が全て元金の返済に充てられるため、将来支払う予定だった利息を大きく軽減することができます。

一般に繰上返済には、「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2つのタイプがあります。「期間短縮型」については、毎月の返済額は変わりませんが、返済期間が縮まり、短縮された期間に支払う予定だった利息が軽減されます。これに対して、「返済額軽減型」については、返済期間は変わらず、毎月の返済額を引き下げる仕組みになっています。

例えば、2,000万円を金利3.0%(全期間固定)、30年返済で借りた場合、返済を始めてから1年後(13回目)に約135万円を「期間短縮型」で繰上返済をすると、返済期間は3年分短縮でき、将来支払わずに済む利息は約169万円に上ります。これを資産運用に置き換えると、元金が約135万円に対して、利息が約169万円も付くことになります。その年平均利回りは、完済までの26年間で割ると約4.8%となり、今時の定期預金の金利が5年満期でも高くて1.5%程度ですから、どれだけ高利回りかがわかるでしょう。このように、繰上返済には大きなメリットがあります。


住宅ローンの繰上返済をする前に注意すべきことは?

よくマネー誌でも、住宅ローンを借りたらどんどん繰上返済をするのが「お得」と書かれ、中には、強迫観念のように繰上返済にいそしむ人も見受けられます。しかしながら、住宅ローンの金利タイプや家計の状況、ライフプランなどによっては、実は繰上返済をしてはいけない人や、繰上返済の仕方やタイミングに注意が必要な人もいます。また、ローン商品が多様化している今日では、気付かないうちに落とし穴に陥ってしまう場合もありますので注意が必要です。以下に、具体的なケースを見ていきましょう。


<ケース1:予備費すら残さずに繰上返済を行う人>

家族の病気や勤め先の倒産、両親が倒れたなど、人生、何があるかわかりません。そのような事態に備えるために、生活費の半年分〜1年分の「予備費」は、いつでも引き出せるような流動性の高い金融商品で準備しておく必要があります。たとえば、生活費が月25万円であれば、予備費の目安は150万〜300万円となります。

ところが、まれに、予備費として手元に残すべき資金まで繰上返済をしてしまう方がいます。ご主人が繰上返済ばかりしていて、手元にはいつも10万円程度しかお金が残らず、「不安だ」と言う奥さんがいましたが、それは奥さんの感覚の方が合っています。実際に、予備費を十分に残さずに繰上返済をしすぎた方で、家族がその後病気になって、結局、金利が高い「フリーローン」を利用することになった、という例もあります。

一般に繰上返済には、利息軽減効果があるのは確かですが、予備費まで充ててしまうようなやり方はやはり大きな間違いといえます。


<ケース2:目的別貯蓄を意識しない人>

目的別貯蓄といえば、特に「教育資金」が大きいと思いますが、こうした支出に備える貯蓄をせずに繰上返済を行った結果、家計によっては、教育費のピーク時に資金がショートしてしまうこともあります。子供を中学から私立に進学させたい場合は、特に注意が必要です。

たとえば、中学から私立に進学する場合、教育費は年間で約120万〜150万円はかかり続け、大学卒業までの累計では約1,200万〜1,500万円かかります。もしも教育資金に回せるのが年間80万円の世帯で、予備費以外の貯蓄をほとんど残さずに繰上返済をしたら、中学から私立に進学した時に、教育資金の年間収支は80万円−120万円=△50万円とマイナスが発生し、そう遠くない将来に資金がショートしてしまう可能性も十分にあります。

また、高校や大学から私立に進学する場合の教育資金でも、貯蓄がないと同じような状況に陥る可能性がありますし、さらにお子さんの数が多いご家庭では、進路によらず、教育資金の負担が通常より重くのしかかりますので十分な注意が必要です。


<ケース3:短期固定期間中の繰上返済のタイミングを気にしている人>

2年固定、3年固定、5年固定などで低金利の住宅ローンを借りた人の中には、金利が上がる前に繰上返済をした方がいいと思い込んで、慌てて「期間短縮型」の繰上返済を行う人がいますが、それが後になって自分を苦しめることになる場合もあるので注意しましょう。

たとえば、下記のように、3000万円、30年返済を5年固定(1.9%)で借入れ、5年経過後の適用金利が4%になったとします。この場合、途中で「期間短縮型」の繰上返済を200万円×2回行っても、6年目の返済額は毎月約2万3000円アップするのに対して、5年経過時に400万円で「返済額軽減型」の繰上返済を行うと、6年目の返済額は毎月約7000円のアップで済みます。

短期固定の住宅ローンの繰上返済の落とし穴(事例)
3000万円、30年返済を5年固定で借入れ、5年経過後の適用金利が4%になった場合
・当初5年間の固定金利:1.9%
・当初5年間の毎月返済額:10万9392円
・5年経過時(6年目以降)の適用金利:4%
・返済条件:元利均等返済、ボーナス返済なし
(1) 2年毎に2回、200万円ずつ期間短縮型の繰上返済をすると・・・
  ↓
5年経過後の適用金利が4%になった場合の毎月返済額=13万2426円(2.3万円アップ)
(2) 5年経過時に1回、400万円で返済額軽減型の繰上返済をすると・・・
  ↓
5年経過後の適用金利が4%になった場合の毎月返済額=11万6692円(0.7万円アップ)

では、何故このようなことが起こるのでしょうか?
それは、期間短縮型で繰上返済をすると、ローン残高が400万円減っても、返済期間が当初の30年から24年6ヶ月に短縮され、さらに金利が4%にアップするため、当初5年間よりも返済額が大幅にアップすることになるからです。すなわち、返済期間の短縮と金利の上昇のダブルパンチが効いて、返済額が大幅にアップする可能性があるのです。

これより、短期固定の住宅ローンの繰上返済においては、当初固定金利の経過後の返済額アップに耐えられる「ゆとりのある家計」の場合は問題ありませんが、そうでなければ、家計のバランスを崩す可能性があります。そのため、「ゆとりのあまりない家計」では、期間短縮型の繰上返済をする際には、十分な注意が必要です。


家計が厳しい時期は、返済額軽減型の繰上返済も一つの選択肢・・・

前項では、安易に繰上返済をしてはいけないケースを見てきましたが、これに該当しない人は何の問題もなく繰上返済をしてもよいかというと、必ずしもそうではありません。今のように、不景気の影響で収入が伸び悩む一方で、社会保険料や税金の負担感が高まる時期には、将来にわたってある程度慎重な対応が必要です。それには、繰上返済はできるだけ「期間短縮型」よりも「返済額軽減型」で行うと安心です。あるいは、交互に行うなども一法でしょう。「お得」を追求した結果、ライフプランや家計の存続に影響がでるのは避けたいところです。

よく、返済額軽減型は期間短縮型よりも不利だといって敬遠する人もいますが、それは一つの勘違いです。返済額軽減型の場合、一回繰上返済をすると、その後の返済額が減りますが、その減った分を貯蓄して、それを繰上返済に再度回すことを繰り返せば、期間短縮型との差はかなり小さくなります。また、返済期間が変わらないことも、あとあと様々な対応が取れるので、一つのポイントかと思います。

今の時代、将来の家計状況は非常に不安ですけれど、繰上返済を安心して行いたいという人は、「返済額軽減型」も検討してみてはいかがでしょうか。


2009年7月
マネーカウンセリングネットWealth
ファイナンシャルプランナー、シニアリスクコンサルタント
豊田眞弓

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