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第62回:公的医療保険制度の保険料は、どのようにして決まるの? (2008年6月)

病気やケガで病院にかかるときに、誰もが「保険証」を持って病院に行きますね。しかし、病院窓口での支払額(自己負担割合)は気にしても、自分の保険料負担がどのくらいなのか答えられる方は少ないのではないでしょうか?今回は、身近なようで意外と知らないことも多い、公的医療保険制度の仕組みや保険料についてチェックしてみましょう。


職業や地域によって異なる公的医療保険制度

日本では、すべての国民が公的医療保険への加入を義務付けられています。公的医療保険制度に加入していれば、病気やケガで病院にかかるときには、一定の自己負担額を支払い、医療行為を受けることができます。公的な医療保険制度は、表1のように職業や年齢によって属する制度が異なり、大きく二つに分けられます。一つは勤め人とその家族が加入する「被用者保険制度」であり、もう一つは自営業者や年金生活者等が加入する「国民健康保険制度」です。

また、平成20年4月からは、75歳以上および一定の障害のある65歳以上の人は、「長寿医療制度(後期高齢者医療制度)」という独立した制度に加入することになりました。

<表1:医療保険制度の概要>

制度 被保険者 保険者(運営者) 自己負担割合









政府管掌健康保険
(政管健保)※
中小企業の会社員等 政府(社会保険庁) 3割 義務教育就学前:2割 70歳〜74歳:
1割 (現役並み所得者:3割)
組合管掌健康保険
(組合健保)
大企業の会社員等 健康保険組合
船員保険 船員 政府(社会保険庁)
共済組合 公務員、私学教職員等 各種共済組合
国民健康保険 自営業者、農業者、年金生活者、無職など、
表中の他の制度に該当しない方
市(区)町村
国民健康保険組合
被用者保険の退職者
(65歳未満)
市(区)町村
長寿医療制度
(後期高齢者医療制度)
75歳以上の方、および65歳以上で一定の障害状態にある方 後期高齢者医療広域連合
(都道府県単位)
1割
(現役並み所得者:3割)

※政管健保は、平成20年10月に「全国健康保険協会」が設立されて保険者となり、「全国健康保険協会管掌健康保険」に変わります。


保険料には、高齢者支援分も含まれる・・・

では、公的医療保険制度の加入者が払う保険料の計算方法を見てみましょう。制度によって詳細は異なりますが、保険料は収入(所得)に応じて計算され、収入(所得)が多いほど保険料は高額になります。また、保険料で負担しているのは、自分たち加入者の給付分だけではなく、高齢者の給付分への支援分も含まれています。

▼健康保険の保険料の仕組みは?

会社員などが加入する健康保険の保険料は、「収入金額」に「一般保険料率」を掛けて計算され、原則として労使で折半して負担します。40歳未満か65歳以上の場合は健康保険料のみ、40歳から65歳未満は健康保険料と介護保険料が合算されます。また、健康保険加入者の一定収入以下の家族は「被扶養者」として家族療養費などの給付が受けられますが、被扶養者がいてもいなくても、加入者の保険料は変わりません。

実際の保険料は、収入金額は会社からの給与等を47段階の「標準報酬(最低58,000円〜最高1,210,000円)」と「標準賞与(賞与支給額の1,000円未満を切り捨てたもの、年間上限額540万円)」に当てはめ、一般保険料率を掛けて計算されます。一般保険料率は、表2や表3のように加入者の医療給付に充てられる「基本保険料率」と、高齢者への医療給付に充てられる「特定保険料率」とで構成されています。なお、組合健保の場合は、調整保険料率もあります。

<表2:政管健保の保険料率の内訳>

一般保険料率
(8.2%)
基本保険料率
(4.9%)
政管健保の加入者の医療給付や保険事業等に充てるための保険料率
特定保険料率
(3.3%)
前期高齢者納付金、後期高齢者支援金、退職者給付拠出金および病床転換支援金等に充てるための保険料率

※政管健保の場合、健康保険の一般保険料率(医療に関わる保険料率)は8.2%、介護保険料率は1.13%
※前期高齢者:65歳〜74歳の公的医療保険制度の加入者、後期高齢者:原則75歳以上の長寿医療制度の加入者

<表3:組合健保の保険料率の内訳(各保険料率は組合によって異なる)>

一般保険料率
(3%〜9.5%)
基本保険料率 組合健保の加入者に対する医療給付、保健事業に充てるための保険料率
特定保険料率 前期高齢者納付金、後期高齢者支援金、退職者給付拠出金および病床転換支援金等に充てるための保険料率
調整保険料率 全国の健康保険組合が共同で行なっている共同負担事業等の財源を確保するために拠出している保険料率

※組合健保の一般保険料率は、3%〜9.5%の間で健康保険組合が自由に設定することができ、労使の負担割合も会社側がより多く負担するように設定することもできるため、所属する保険組合によって保険料は異なる

<表4:政管健保の健康保険料(加入者負担分)の例>

標準報酬月額:30万円の場合
40歳未満もしくは65歳以上 12,300円(健康保険料のみ)
40歳以上65歳未満 13,995円(健康保険料+介護保険料)

▼国民健康保険(国保)の保険料の仕組みは?

自営業者や年金生活者などが加入する国民健康保険(国保)の保険料は、健康保険と同様、40歳未満あるいは65歳以上の人は医療分のみ、40歳以上65歳未満の人は医療分と介護分を合算したもので、さらに高齢者の医療給付を支援する「後期高齢者支援金分」も合算されます。

保険料は、所得割・資産割・均等割・平等割の4つのパターンを組み合わせて決定されます。市(区)町村ごとに保険料の計算方法は異なるため、同じ収入であっても、居住地域によって保険料は違ってきます。また、健康保険と違い、国保の場合は家族のそれぞれが「加入者」となるため、家族の人数・各々の収入によって、保険料は違ってきます。

<表5:国民健康保険料の計算例(東京都足立区のHPより参照)>

夫(41歳)、妻(39歳)、子(4歳)の3人世帯
平成20年度住民税(保険料算定基礎額):夫15万円、妻・子は非課税の場合
※夫は40〜64歳に該当するので、医療分保険料と後期高齢者支援金分保険料に加え、介護分保険料もかかる。
(1)医療分保険料 =医療分所得割額+医療分均等割額
=150,000円×0.9+28,800円×3人分=221,400円
(2)後期高齢者支援金分保険料 =後期高齢者支援金分所得割額+後期高齢者支援金分均等割額
=150,000円×0.27+8,100円×3人分=64,800円
(3)介護分保険料 =介護分所得割額+介護分均等割額
=150,000円×0.2+11,100円×1人分=41,100円
国民年金保険料(年間) =(1)+(2)+(3)=327,300円

平成19年度から住民税率が一律10%に変更されたため、住民税額から一定率(額)を控除して保険料算定基礎額を求めるが、上記の計算例ではこの部分は省略している

以上のように、安くはない保険料を負担しているわけですが、実は私たちが負担しているのは保険料だけではありません。次に、公的医療保険制度の費用負担について見てみましょう。


公的医療保険制度は、実は保険料だけではまかなえない・・・

公的医療保険制度にかかる費用の大部分は、加入者の保険料と病院窓口で払う自己負担金でまかなわれていますが、公費負担分(私たちの税金)もあります。公的医療保険の事務経費は全額国庫負担で、給付等にも税金負担分があります。高齢の加入者が多く財政的に厳しい国民健康保険の給付費の約半分は公費でまかなわれており、健康保険にも国の負担分があります。

<表6:医療保険制度の公費(税金)負担等>

政管健保 給付費の13%を国庫補助
組合健保 国庫負担金(被保険者数を基準に算定される)
国民健康保険
(市区町村)
・療養給付費負担金・・・給付費の34%を国が負担
・財政調整交付金・・・財政力の弱い市区町村などに交付される。国全体で保険給付総額の9%が国から、7%が都道府県から交付
・保健師に関する費用への補助 など

また、平成20年4月から始まった長寿医療制度(後期高齢者医療制度)では、費用の半分は公費負担であり、費用の4割は現役世代の納める保険料でまかなうことになっています。

<表7:長寿医療制度(後期高齢者医療制度)の費用負担割合>

患者負担
(1割)
公費5割(国:都道府県:市区町村=4:1:1)
高齢者の保険料(1割) 現役世代の保険料(4割)

このように、私たちは公的医療保険制度を保険料ばかりでなく、税金でも支えているわけです。4月から始まった「長寿医療制度」をめぐる混乱を、「お年寄りは大変だなー」と同情していた方もおられると思いますが、実は他人事ではなかったのですね。

公的医療保険制度は、収入に応じて保険料や税金を払い、国民みんなで助け合って支えているというのが根本的な仕組みです。保険料をたくさん払ったからといって、たくさん給付がもらえる仕組みではありませんが、いやおうなく保険料や税金を払っている「保険」なのですから、いざという時にはフル活用したいものです。


一番身近な公的医療保険を使いこなそう!

いざという時の備えに、民間の生命保険(医療保険)を利用するのも大切ですが、公的医療保険の給付内容をよく知らないために、必要以上に多額の保険料を払うのはもったいない話です。公的医療保険制度の給付内容をあらためて把握し、民間の医療保険は足りない部分の補完として考えましょう。

<表8:高額療養費の自己負担限度額(70歳未満)>

対象 外来・入院
上位所得者
〔標準報酬月額53万円以上〕
150,000円+(総医療費−500,000円)×1% 〈83,400円〉
一般 80,100円+(総医療費−267,000円)×1% 〈44,400円〉
低所得者
〔住民税非課税世帯〕
35,400円 〈24,600円〉

※金額は1ヶ月あたりの限度額。〈  〉内は多数該当(1ヶ月に4回以上入院するような場合)の限度額

特に、「高額療養費制度」は要チェック。これは、病院窓口で払った金額が一定額(自己負担限度額)を超えた場合、超過金額が戻ってくる制度です。保険の適用される診療であれば、一ヶ月の自己負担限度額は最大で約8万円超となります(収入によって異なる)。この自己負担限度額を踏まえて、民間の医療保険の保険金額は考えたいものです。

なお、「公的医療保険」が適用されない医療があることも確認しておきましょう。たとえば、最新の医療行為や日本で未承認の薬を使った医療行為などには、保険外診療(自由診療)のものがあり、全額自己負担となります。原則的には、一部保険外診療を受けると、通常保険が適用される診察や投薬、入院費等も含めて全額自己負担となってしまうのです(混合診療)。ただし、厚生労働大臣の定める「評価療養」と「選定医療」について医療行為を受けた場合は、通常保険が適用される部分は保険を適用(保険外併用療養費)されることになっています。このような仕組みから、保険外診療部分の備えとして、民間の医療保険を利用するという考えもありますね。

最後に、公的な医療保険制度には表9のような給付があります。さらに付加給付のある健保組合もあり、また国保の場合は市区町村で給付内容が異なるので、より詳しく知りたい場合は、加入している制度の窓口やHP等で一度給付内容を確認してみるのもよいでしょう。

<表9:医療保険制度の主な保険給付内容>

具体的なケース 健康保険 国民健康保険
(国保)
被保険者 被扶養者(家族)
病気やケガをして、被保険者証で治療を受けるとき 療養の給付
入院時食事療養費
特定療養費
訪問看護療養費
家族療養費
家族訪問看護療養費
療養の給付
入院時食事療養費
特定療養費
訪問看護療養費
立替払いをしたとき
(現金給付)
療養費
高額療養費
家族療養費
高額療養費
療養費
高額療養費
緊急時などに移送されたとき(現金給付) 移送費 家族移送費 移送費
療養のため会社を休んだとき(現金給付) 傷病手当金
出産したとき
(現金給付)
出産育児一時金
出産手当金
家族出産育児一時金 出産育児一時金
死亡したとき 埋葬料(費) 家族埋葬料 葬祭費
退職後も継続または一定期間の給付があるもの 傷病手当金
出産手当金
出産育児一時金
埋葬料(費)

※国民健康保険の現金給付は任意給付なので、市区町村によって異なる。

2008年6月
ファイナンシャル・プランナー(CFP®)大林香世

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